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カテゴリー「代謝異常」の60件の投稿

2009年11月13日 (金)

CLN8の新規変異には後期発症乳児神経セロイドリポフスチノーシスの臨床的、民族的多様性がある

Novel CLN8 mutations confirm the clinical and ethnic diversity of late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis.
Clin Genet. 2009 Oct 6.

CLN8の新規変異には後期発症乳児神経セロイドリポフスチノーシスの臨床的、民族的多様性があるという論文です。神経セロイドリポフスチノーシス(NCLs)は遺伝性ライソゾーム蓄積病の一つで、小児期発症の神経変性疾患の一つである。これまで10のNCL分類が知られており、自己染色性の蓄積物、発症年齢、臨床症状によって分けられていた。CLN8は最初、フィンランド人で進行性のてんかんと精神遅滞と呈する後期発症型の原因遺伝子として同定された。その後、CLN8変異はトルコ、イスラエル、イタリアの患者でも見つかり、より進行性の視力低下、てんかん、失調、精神遅滞を呈した。今回ドイツ(c.611G> T)とパキスタン (c.709G> A)人でCLN8の新規変異を見つけたので報告する。これによりCLN8の多様性は多くの民族で起きているというこれまでの考えを裏付けるものであった。今までのところ、CLN遺伝子の大欠失はCLN3遺伝子のみで報告がある。今回、CLN8の大欠失c.544-2566_590del2613をトルコ人家族でみつけ、若干他のものより重症の表現形を呈した。これにより後期乳児型NCLの臨床症状と特徴的な封入体を持つ患者では、民族にかかわらず、CLN8の変異スクリーニングをすべきであると思われた。

2009年10月31日 (土)

背側中脳症候群関連のリー脳

Leigh's disease associated with a dorsal midbrain syndrome.
J Pediatr Ophthalmol Strabismus. 2009 Sep-Oct;46(5):304-5.

背側中脳症候群関連のリー脳症についての論文です。リー脳症は、ミトコンドリア機能障害によるまれな進行性の神経変性疾患である。今回背側中脳症候群の9歳女児が輻輳・眼球後退眼振をきたした。MRIと皮膚生検、遺伝子検査で二つのSURF1遺伝子変異によるリー脳症によって起きているとわかった。我らが知る限り、これはミトコンドリア障害による背側中脳症候群の最初の報告である。

2009年10月24日 (土)

熱+ミトコンドリア病は自閉的退行のリスクファクター

Fever Plus Mitochondrial Disease Could Be Risk Factors for Autistic Regression.
J Child Neurol. 2009 Sep 22.

 熱+ミトコンドリア病は自閉的退行のリスクファクターであるという論文です。自閉症スペクトラムは、多くの病気に合併し、多くの遺伝子が原因とされている。この中にミトコンドリア病がある。ミトコンドリア病を含む代謝疾患の多くが、発熱による退行を示すために、後方視的にカルテを見返し、自閉症スペクトラムとミトコンドリア病の診断基準を満たす28人の患者をピックアップした。28人のうち17人(60.7%)に自閉的退行を認め、統計的に遺伝的に自閉症スペクトラム病の集団の中で退行を示す人よりも多いと思われる。自閉的退行を示す17人のうち、70.6%(17人中12人)が発熱時に退行を示し、残り29.4%は、熱やワクチンと明らかな関係がなく、退行を示した。発熱がなくワクチン単独で退行を示したものはいなかった。この研究は小規模であるが、ミトコンドリア病の患者グループが発熱時の自閉的退行のリスクとなるかもしれない。ミトコンドリア病ではワクチンが推奨されているが、それに伴う発熱の管理が退行のリスクを減らすうえで重要である。

2009年10月 4日 (日)

小児期の糖尿病による自律神経障害の新知見

New insights in diabetic autonomic neuropathy in children and adolescents.
Eur J Endocrinol. 2009 Sep 4.

小児期の糖尿病による自律神経障害の新知見についての論文です。糖尿病性の自律神経障害(DAN)は、糖尿病の大合併症であるが、その有病率、病因、診断、予後は不確かである。DANの病因について対立意見がある。古典的仮説はいくつかの新知見により補足されてきている。自律神経障害の臨床症状は、糖尿病の発症後、長期間顕在化しない。DANは無症状の糖尿病小児にさえ見つかることがあり、 多くは心血管障害といった重大な合併症と関連がある。心血管障害といったさまざまな副作用と関連があるため、心血管自律神経障害は臨床的に最も重要で、DANの中ではよく研究されている分野である。DANの治療方法は定まっておらず、発症早期にほぼ正常域に血糖をコントロールすることが臨床的に問題となる神経障害の進行を遅らせる。今回、最近のDANの疫学、病因、症状、診断、治療についての新知見についてのべる。
 

2009年9月23日 (水)

乳児無呼吸のまれな原因としての母系遺伝のリー脳症

Maternally inherited Leigh syndrome: an unusual cause of infantile apnea.
Sleep Breath. 2009 Aug 11.

乳児無呼吸のまれな原因としての母系遺伝のリー脳症に関する論文です。リー脳症は乳児無呼吸のまれな原因です。今回5か月の女児が突然の呼吸不全と高もしくは低換気、脳症、持続的乳酸アシドーシスを呈した。脳CTでは基底核、内包、視床、中脳の全体的な低吸収であった。心電図では心肥大が疑われた。ミトコンドリアゲノムのPCRと直接DNAシークエンスによりT8993G変異が判明しリー脳症の診断となった。われわれが知る限り、香港における母系遺伝リー脳症の最初の報告である。
   

2009年9月 9日 (水)

X連鎖副腎白質ジストロフィーの患者が神経線維腫症Ⅰ型所見を合併

Manifestation of neurofibromatosis 1 in a patient with X-linked adrenoleukodystrophy.
Pediatr Neurol. 2009 Sep;41(3):211-4.

X連鎖副腎白質ジストロフィーの患者が神経線維腫症Ⅰ型(NF1)所見を合併した。X連鎖副腎白質ジストロフィーの患者がNF1の症状を呈した。彼は大きな多数のカフェオレ斑を持ち、極長鎖脂肪酸の血中濃度が上昇していた。患者の母と姉もまたX連鎖副腎白質ジストロフィーであった。このケースではX連鎖副腎白質ジストロフィーの患者において、NF1症状を呈しうることをを示している。

2009年9月 8日 (火)

後期発症尿素サイクル異常症の神経精神状態

Neuropsychiatric Manifestations in Late-Onset Urea Cycle Disorder Patients.
J Child Neurol. 2009 Aug 14.

 後期発症尿素サイクル異常症の神経精神状態についての論文です。遺伝性尿素サイクル異常症は先天性代謝異常のなかでも最もよく認める疾患の一つである。酵素部分欠損による後期発症尿素サイクル異常症は、さまざまな臨床症状を呈する。今回当病院でみている9人の後期発症尿素サイクル異常症の児で、最初に呈した神経精神症状(精神遅滞、ADHD、言語障害、せん妄など)を示す。一般的にこれらの症状は、薬物療法では効かない。逆に食事療法で症状が軽快する。検査値にしたがい、2人の患者が正常のアンモニア値となったが、グルタミンレベルは高かった。この研究の大事なことは、精神神経症状は後期発症尿素サイクル異常症の初発症状としてよく認めるというところある。小児期、青年期に認める説明のつかない、また治療に反応しない精神神経症状では、尿素サイクル異常症を除外するために、アンモニアやアミノ酸を測定すべきである。

2009年8月23日 (日)

全大脳低髄鞘化を呈するAGC1欠損症

AGC1 deficiency associated with global cerebral hypomyelination.
N Engl J Med. 2009 Jul 30;361(5):489-95.

全大脳低髄鞘化を呈するAGC1欠損症についての論文です。ミトコンドリアアスパラギン酸グルタミン酸転送体アイソフォーム1(AGC1)は神経、筋に特異的に発現し、マレイン酸アスパラギン酸シャフルの成分として細胞質へアスパラギン酸を供給し、細胞質NADHのミトコンドリア酸化を行うため、中枢神経システムにおけるニューロンのエネルギー供給に重要なものだと考えられている。今回AGC1欠損症という小児の精神運動発達停止、筋緊張低下、けいれんを特徴とした新しい症候群について述べる。AGC1タンパクをコードする可溶性キャリアファミリー25、メンバー12である遺伝子SLC25A12のホモミスセンス変異を認めた。変異AGC1蛋白の機能分析では活性が低下していた。その小児は大脳半球の全ての低髄鞘化を呈した。神経ミトコンドリアからのアスパラギン酸の流出障害により正常の髄鞘化が妨げられたと考えられた。

2009年8月 8日 (土)

炎症性の小児白質疾患におけるペルオキシソーム機能異常

Peroxisomal Dysfunction in Inflammatory Childhood White Matter Disorders: An Unexpected Contributor to Neuropathology.
J Child Neurol. 2009 Jul 15.

炎症性の小児白質疾患におけるペルオキシソーム機能異常についての論文です。ペルオキシソームは細胞内小器官で、細胞内代謝の重要な役割を果たしている。ヒトの健康を保つ上でのペルオキシソームの重要さは、遺伝的に異常の際に致死的な結果になることからもわかる。最近ペルオキシソームの異常が遺伝性のペルオキシソーム病に限らず、他の病気でも見られることがわかった。それは細胞内ペルオキシソームをダウンレギュレイトするような炎症性メディエイターの産生と関係している。ロイコジストロフィー(ALD、GLD、PVL)では、炎症性の反応が次々に起こり、そのためペルオキシソームの機能異常がおきているという共通の機序がおきているかもしれないといいう証拠が出てきた。それゆえペルオキシソームの機能異常では、一部白質に病気を起こし、一部白質のみでは説明のつかない精神運動異常を起こすこととなる。

2009年8月 5日 (水)

異染性白質ジストロフィーのチュニジア人患者におけるアリルスルファターゼAのホモ偽欠損

An Unusual Homozygous Arylsulfatase A Pseudodeficiency in a Metachromatic Leukodystrophy Tunisian Patient.
J Child Neurol. 2009 Jul 2.

 異染性白質ジストロフィーのチュニジア人患者におけるアリルスルファターゼAのホモ偽欠損についての論文です。異染性白質ジストロフィーは常染色体劣性の神経変性ライソゾーム病で、ライソゾーム病酵素であるアリルスルファターゼAの欠損と神経や内蔵臓器へのスルファチドの蓄積を特徴とする。臨床的診断はアリルスルファターゼAの分析で行われるが、アリルスルファターゼAの偽欠損でスフィンゴ脂質アクチベーター蛋白欠損の合併例が存在する。今回3歳の少年が乳児期後期異染性白質ジストロフィーの重症型を呈したので報告する。この患者はアリルスルファターゼA偽欠損のホモとして見つかった。この状態は希であり、かつ重症になる可能性がある。出生前診断が家族で行われたが、胎児は健康であった。

2009年8月 3日 (月)

サウジアラビアにおける神経セロイドリポフスチノーシスの遅発乳児型

Variant late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis (CLN6 gene) in Saudi Arabia.
Pediatr Neurol. 2009 Jul;41(1):74-6.

サウジアラビアにおける神経セロイドリポフスチノーシスの遅発乳児型についての論文です。いくつかの神経セロイドリポフスチノーシスの遅発乳児型は神経セロイドリポフスチノーシスの多民族にわたって認めるタイプの一つである。今回、サウジアラビアで最初に見つかった3家系を報告し、うち一つがCLN6遺伝子の新規変異を呈した。CLN6関連文献をまとめる。

2009年8月 1日 (土)

 複合性局所疼痛症候群と壊血病

Complex regional pain syndrome type 1 and scurvy.
Indian Pediatr. 2009 Jun;46(6):529-31.

 複合性局所疼痛症候群と壊血病についての論文です。5歳のになる女児が複合性局所疼痛症候群(CRPS)を呈した。触るだけで痛く、汗が減少し、左足のむくみを左脛骨骨折後2年にわたり認めた。歯肉出血、点状出血、偽麻痺、レントゲン写真により壊血病が疑われた。ビタミンCの補給により知覚過敏は改善し、差さえありで歩けるようになった。

2009年7月25日 (土)

ローランドミトコンドリア脳症とmtDNAのND3変異

Rolandic mitochondrial encephalomyelopathy and MT-ND3 mutations.
Pediatr Neurol. 2009 Jul;41(1):27-33.

ローランドミトコンドリア脳症とmtDNAのND3変異についての論文です。ミトコンドリア脳症は複合体Ⅰサブユニット遺伝子の呼吸鎖の変異によっておきる。今回二人の小児が、MELAS様の鳥距域病変に加え、新しい両側のローランド域病変、持続性部分てんかん、2次性のmtDNAのND3変異を呈した。神経学的所見、脳画像、代謝系の測定、筋生検、ミトコンドリア生化学、分子学検査を行った。家族から発表の同意を得た。筋組織は大きな変化はなく、RRFやCOXnegative fiberなどは認めなかった。患者2の筋のmtDNAのシークエンスを行ったところ、ND3の10158T>Cのヘテロプラスミーの変異を認めた。患者1では同じくND3の10191T>Cの75%ヘテロプラスミーの変異を認めた。ミトコンドリア病が疑われる両側のローランド域病変と持続性部分てんかんはmtDNAのND3遺伝子の変異解析の適応と思われた。

2009年7月10日 (金)

ビオチン反応性基底核疾患

Biotin-Responsive Basal Ganglia Disease: A Treatable and Reversible Neurological Disorder of Childhood
J Child Neurol 2009 24: 750-752.

ビオチン反応性基底核疾患についての論文です。ビオチン反応性基底核疾患は希な原因不明の病気であるが、その疾患を疑ったり、診断できたら治療可能な病気である。これまでほんの数例しか報告されていない。今回臨床的、画像的に、またそのビオチン治療の劇的な反応性からビオチン反応性基底核疾患を疑われる症例を経験したので報告する。

2009年7月 9日 (木)

クラッベ病の病因と治療

Pathogenesis of leukodystrophy for Krabbe disease: Molecular mechanism and clinical treatment
Brain and Development Volume 31, Issue 7, Pages 485-487 (August 2009)

 クラッベ病の病因と治療についての論文です。今回、ロイコジストロフィー、なかでもクラッベ病の基礎的な病因について報告する。初めに正常な髄鞘化の過程と脱髄の病理を説明し、その進行過程でおきる神経炎症を来たすことを強調する。代謝性のロイコジストロフィーを分類した後、クラッベ病の病像を分子クローンニングとガラクトセレブロシダーゼ遺伝子の変異分析によって説明する。最後に、クラッベ病患者の造血幹細胞移植経験について報告し、この病気の未来の治療可能性についてまとめる。

2009年7月 7日 (火)

神経セロイドリポフスチノーシス

Towards understanding the neuronal ceroid lipofuscinoses
Brain and Development Volume 31, Issue 7, pages 499-502

神経セロイドリポフスチノーシスについての論文です。神経セロイドリポフスチノーシス(NCLs)は、小児ならびに成人の遺伝性進行性脳病変であり、網膜病変による視力障害、てんかん、精神退行を特徴とする。NCLsの共通の病因として自己蛍光物質であるセロイドリポフスチンの蓄積により、神経細胞が変性する蓄積病である。少なくとも10の遺伝的に異なるNCLs(CLN1-CLN10)が現在知られている。いくつかのNCLsでは多様な臨床症状を呈し、それは個々の変異の重症度による。いくつかのNCLsはとりわけ珍しいというわけではない。これらの疾患の理解が進み、診断手技がよくなれば、もっと多くの患者がみつかる。この論文では病気に対する理解、診断、患者管理についての最近の進歩について述べる。

2009年7月 6日 (月)

小児副腎白質ジストロフィーの初期神経精神的徴候

Early neuropsychological signs of childhood adrenoleukodystrophy (ALD)
Brain and Development Volume 31, Issue 7, Pages 558-561 (August 2009)

 小児副腎白質ジストロフィーの初期神経精神的徴候についての論文です。小児大脳型副腎白質ジストロフィー(CALD)の無症状期の初期徴候を見つけることがこの研究の目的である。方法として8人の神経学的、また画像的に無症状なCALDの患者さんを対象とした。かれらは、造血幹細胞移植前の22人のALD患者から抽出した。WISCと他の神経精神学的テストを行った。かれらのIQを、明らかに脳異常のある症候性のALD小児のIQと比較した。全ての非症候性のCALD患者で、FIQは正常であった。PIQは2人でVIQよりかなり劣っていた。後頭部に画像異常を呈する無症候性患者ではしばしばVIQが正常でPIQが低値であった。K-ABC知能テストにおける絵の統合とフロステイソク視知覚発達テストにおける形の恒常性によって、正常範囲内でVIQやPIQが解離する無症候性のCALDの視覚認知異常を適格に捉えることができる。結論として、無症状のALDの少年にこれまで報告されてきた神経生理学的検査によって経過をみることで、治療のタイミングを決定するのに役立つと思われる。神経生理学的異常は臨床的、MRI的な変化以前に現れるからである。

K-ABC:Kaufman and Kaufman(1983a;1983b)によって開発されたThe Kaufmann Assessment Battery for Children(K ABC)は、幼児・児童を対象とした、新しい個別式知能検査である。本検査は、知能を測定する認知処理過程尺度と習得知識を測定する習得度尺度から構成されている。

the Frostig Developmental Test of Visual Perception :フロステイソク視知覚発達テスト

2009年7月 5日 (日)

アレキサンダー病のまとめ

Review of Alexander disease: Beyond the classical concept of leukodystrophy, 22 April 2009
Brain and Development Volume 31, Issue 7, pages 493-498

 アレキサンダー病のまとめ(古典的なロイコジストロフィーの概念を超えて)です。アレキサンダー病はロイコジストロフィーに分類され、大脳白質を侵す原発性の変性疾患である。従来正式な診断は、生検か剖検で脳のロゼンタルファイバーのびまん性の蓄積を証明することであるが、現在は診断としてGFAP遺伝子のヘテロ変異を示すことで行われる。ロゼンタルファイバー形成の機序はよくわかっていない。しかしながら、GFAPの質と量は重要である。GFAP-εはGFAPのスプライス部位が異なるもののひとつで、凝集形成に際して重要な働きをする。MRIが世界中に広がり
、診断が容易になったため、、アレキサンダーの患者が各地で見つかった。古典的乳児タイプに対して、若年または成人タイプの患者は、おもに延髄関連症状を訴えるようになり、軽く最小限の白質変化をともなう進行性の下位脳幹と頸髄の進行性萎縮が認めるようになった。多くのアレキサンダー病のMRI所見では、厚さや形によって異なる脳室周囲の線状病変は病態を反映していると思われる。というのも成人の脳の脳室周囲領域は、GFAP-εをつくる多能前駆細胞やとして振舞う特別なアストロサイトを含むからである。いくつかの変異を除き、アレキサンダー病における表現形と遺伝子形の関係はよくわかっていない。乳児型における男性が多いのは、表現形が性と一部関連しているのではないかと思われる。

2009年6月29日 (月)

ビタミンB12で治療中の不随意運動

Involuntary Movements During Vitamin B12 Treatment.
J Child Neurol. 2009 Jun 12.

 ビタミンB12で治療中の不随意運動についての論文です。ビタミンB12 欠損により神経異常が起きるとずっと昔から知られている。これらの問題の一つに、ビタミンB12治療の開始前後で現れる不随意運動がある。今回、ビタミンB12投与による運動異常を呈した3人の乳児について報告する。運動異常は振戦と顔面、舌、四肢のミオクローヌスの混在したものであった。症状が重いため、3人とも薬物治療を要した。うち二人はクロナゼパムにより不随意運動はコントロールされた。残りの一人は、ピラセタムによりコントロールできた。

2009年6月14日 (日)

尿の[(1)H]MRSとグアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ欠損症

[(1)H]Magnetic Resonance Spectroscopy of Urine: Diagnosis of a Guanidinoacetate Methyl Transferase Deficiency Case.
J Child Neurol. 2009 May 21.

尿の[(1)H]MRSとグアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ欠損症の診断についての論文です。今回初めて[(1)H]MRSを用いて、原因不明の中枢神経障害1500人の小児の中からグアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ欠損症の一人を見つけ出した。原因不明の難治性のてんかんと非進行性の精神運動発達遅滞9歳の小児の尿の[(1)H]MRSでは、グアニジノ酢酸が上昇していた。尿サンプルを純基質と混ぜ、MRSを用いることでグアニジノ酢酸が検出された。グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ欠損症の診断は液体クロマトグラフィーとMRS、グアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ遺伝子の変異解析により行った。代価療法がすぐに始められ、1年後けいれん発作がなくなった、この症例から尿の[(1)H]MRSスクリーニングによりグアニジノ酢酸メチルトランスフェラーゼ欠損症の診断ができると考えられた。

2009年6月13日 (土)

17歳の再発性四肢筋力低下

kRecurrent limb weakness in a 17-year-old boy.
Clin Pediatr (Phila). 2009 Jun;48(5):555-7. Epub 2009 Feb 25.
17歳の再発性四肢筋力低下についてです。ウィルソン病は比較的希な銅蓄積病で過剰銅を胆道系に排泄する経路にある酵素の欠損でおきる。17歳の男児が、12歳より繰り返す原因不明の低K性の四肢の筋力低下を認めた。臨床的には腱反射は保たれる下肢の運動ニューロンの筋力低下を認め、感覚異常は認めなかった。検査により腎尿細管性アシドーシス、肝炎、両側のKayser-Fleischer環を認めた。低セルロプラスミン血症、高血清銅、ペニシラミン後の高尿中銅からウィルソン病の診断が確定した。彼はペニシラミンと亜鉛によく反応した。代謝異常症の顔つきと説明のつかない肝機能障害患者で低K血症による四肢の筋力低下を示す小児ではウィルソン病を考えるのがよい。

2009年6月11日 (木)

プロピオン酸血症患者に認めた小脳出血

Cerebellar Hemorrhage in a Patient with Propionic Acidemia.
Cerebellum. 2009 May 26.

 プロピオン酸血症患者に認めた小脳出血についての論文です。小脳出血は新生児においてよく認める病気である。代謝疾患患者においても以前より知られていたが、報告は少ない。今回プロピオン酸血症患者で認めた小脳出血について報告する。無症候性でMRIにて診断がついた。幼少時期では症状が出にくいため、代謝疾患患者、特に神経症状を認める際は神経所見スクリーニングの一つとして脳MRIを含めるべきであると思われた。

2009年6月 8日 (月)

グルタル酸尿症タイプIの脳症クライシスにおけるけいれんとジストニア

Seizures versus dystonia in encephalopathic crisis of glutaric aciduria type I.
Pediatr Neurol. 2009 Jun;40(6):426-31.

グルタル酸尿症タイプIの脳症クライシスにおけるけいれんとジストニアについての論文です。3分の2以上のケースで、グルタル酸尿症1型では最初の3年間の間に、筋緊張低下と全身の硬直、神経学的抑制、易刺激性、けいれん、ジストニアを伴う急性脳症発作を起こす。脳症を呈した13人のグルタル酸尿症I型患者(9人の男児、4人の女児、平均8.7ヶ月、3-15ヶ月)の臨床経過を振り返り、その臨床的特徴と最初の脳波所見を述べる。12人の患者が発症時発作性イベントを呈した。他の臨床的特徴として易刺激性(12/13)、神経抑制(11/13)、筋緊張低下(7/13)であった。すべての患者はジストニックな四肢麻痺を呈した。急性期ならびに1年後のfollow upとして35回の脳波を記録した。脳波での棘波は13人中たった2人しか認めなかったが、8人で背景脳波の低振幅化を認めた。follow up期間中、けいれんを起こしたものはいなかった。けいれんはグルタル酸尿症1型の発症時に認めたが、大部分の発作イベントはジストニアの様である。この仮説は4つの事実による。ジストニアの治療をするとけいれんは起こらない、突発時脳波は急性期あまり認めない、抗てんかん薬が長期に必要がない、経過観察中のてんかんは希である、の4つである。

2009年6月 6日 (土)

X連鎖クレアチントランスポーター欠損症患者におけるアルギニン補充療法

Arginine supplementation in four patients with X-linked creatine transporter defect.
J Inherit Metab Dis. 2008 Dec;31(6):724-8. Epub 2008 Oct 16.

 X連鎖クレアチントランスポーター欠損症の4人の患者におけるアルギニン補充療法についての論文です。経口クレアチン一水和物による治療はクレアチントランスポーター欠損症の患者では効果はないとされた。別の治療としてLアルギニンがあり、それはLアルギニン・グリシンアミジノトランスフェラーゼという酵素の基質である。今回クレアチントランスポーター欠損症の4人の患者に対してLアルギニン治療を行い、その臨床的特徴と脳クレアチン補充について評価してみた。クレアチントランスポーター欠損症と遺伝的に確定診断された4人の少年に、9ヶ月間Lアルギニン補充療法 (0.4 g/kg per day)を行った。治療効果は臨床的、神経生理学的項目とMRSでのクレアチンシグナルにより評価した。てんかん発作は、3人でLアルギニン補充療法前後でも良好にコントロールされた。Vineland Adaptive 行動スケールでは、コミュニケーション、日常生活動作、社会性、運動能力では特に変化はなく、MRSでも改善を認めなかった。Lアルギニンは、観察期間終了とともに中止した。結論として、このプロトコールではLアルギニンの9ヶ月間投与では、4人の患者では効果を認めなかった。

2009年6月 3日 (水)

重篤な臨床病型を呈した2人のX連鎖クレアチントランスポーター欠損症

X-linked creatine transporter defect: a report on two unrelated boys with a severe clinical phenotype.
J Inherit Metab Dis. 2006 Feb;29(1):214-9. 

 重篤な臨床病型を呈した2人のX連鎖クレアチントランスポーター欠損症についての論文です。今回、これまで報告されているよりも、より重篤な臨床症状をていした2人の少年について報告する。2人は12ヶ月と30ヶ月の児で、重度の精神遅滞と表出言語の欠如、筋緊張低下、ミオパチー、錐体外路症状を示した。一人はけいれんと多発奇形を呈し、酸化的リン酸化の欠如も呈した。彼らは脳MRSにてクレアチンピークの欠損を示した。しかしながら一人では、この所見は、最初の検査では見逃されており、MRSの再検査で見つかった。分子的検査ではSLC6A8遺伝子の3`末端の大きな遺伝子欠失によるリーディングフレームシフトが認められた。この報告により、神経疾患をみる際のMRSの重要さとクレアチントランスポーター欠損症の臨床病型の広さと脳と網膜におけるクレアチン欠失の病因についての知見を示してくれた。

2009年6月 2日 (火)

重度の精神遅滞と自閉症を呈した2人のX連鎖クレアチントランスポーター欠損症

X-Linked creatine transporter deficiency in two patients with severe mental retardation and autism.
J Inherit Metab Dis. 2006 Feb;29(1):220-3.

 重度の精神遅滞と自閉症を呈した2人のX連鎖クレアチントランスポーター欠損症についての論文です。今回、最初脳のMRSにて見つかったクレアチントランスポーター欠損症の2人のスペイン人患者について報告する。臨床病型は重度の精神遅滞、てんかん、自閉症、重度の言語障害、脳MRSでのクレアチン欠損である。両患者の尿中のクレアチン/クレアチニン比は上昇し、線維芽細胞のクレアチン取り込みは阻害されていた。SLC6A8クレアチントランスポーター遺伝子のDNAシークエンス解析により、一つのヘテロ変異がそれぞれの患者に認めた。一つは新規変異でエクソン5におけるc.878-879delTCという2つのヌクレオチドの欠失でその結果フレームシフトが起きた(p.Lys293fsX3)。もう一つがエクソン8の3ヌクレオチドの欠失(1222-1224delTTC)で、その結果p.Phe408delとなった。1年にわたるクレアチン治療でも神経症状の改善はなく、両患者ともに著明な体重減少を認めた。

2009年6月 1日 (月)

重度のてんかんを呈したX連鎖クレアチントランスポーター欠損症

Severe epilepsy in X-linked creatine transporter defect
Epilepsia. 2007 Jun;48(6):1211-3.

 重度のてんかんを呈したX連鎖クレアチントランスポーター欠損症についての論文です。クレアチン合成障害、もしくはそのトランスポーターの障害により知的障害やてんかんなどの神経異常を呈することが知られている。これまでクレアチントランスポーター欠損症患者に生じたてんかんは、軽症型でけいれんの数も少なく、薬にも反応が良いとされている。今回、重度で再発性のてんかんを呈した言語遅滞を認める5歳児を報告する。精査の結果、代謝検査とMRSでクレアチントランスポーター欠損症が疑われ、SLC6A8遺伝子に病的変異 (c.1631C>T; p.Pro544Leu)が見つかったため確定診断となった。

2009年5月31日 (日)

 先天性クレアチントランスポーター欠損症

Congenital creatine transporter deficiency.
Neuropediatrics. 2002 Oct;33(5):232-8.

 先天性クレアチントランスポーター欠損症についての論文です。X連鎖のクレアチントランスポーター欠損症の他に2つのクレアチン合成の先天性代謝異常がある。今回、X連鎖クレアチントランスポーター欠損症患者の5人の男性とそのキャリアである一人の女性患者の特徴について報告する。彼らはMRSによってクレアチン欠損症を疑い、SLC6A8遺伝子の分子解析をしたところ、ホモの男性とヘテロの女性患者の診断が確定した。今回X連鎖クレアチントランスポーター欠損症のメトロポリタン地域に住む4家系について報告する。全ての罹患男性は精神遅滞と重度の言語発達遅滞を呈した。男性患者のプロトンMRSでは、クレアチンとホスホクレアチンの完全欠損を認めた。この家系においてSLC6A8遺伝子においてナンセンス変異ならびにアミノ酸欠損が見つかった。クレアチントランスポーター欠損症はこれまで考えられていたよりも、より一般的なX連鎖遺伝疾患である。罹患男性は重度の言語障害を伴う知的障害を呈した。

2009年5月30日 (土)

単独複合体III欠損患者に認めた新規BCS1L遺伝子変異による非典型的な乳児ミトコンドリア脳症

Infantile mitochondrial encephalomyopathy with unusual phenotype caused by a novel BCS1L mutation in an isolated complex III-deficient patient.
Neuromuscul Disord. 2009 Feb;19(2):143-6.

 単独複合体III欠損患者に認めた新規BCS1L遺伝子変異による非典型的な乳児ミトコンドリア脳症についての論文です。呼吸鎖複合体IIIの集合シャペロンであるBCS1Lの変異は、ミトコンドリア複合体III欠損の主な原因であり、GRACILEやBjornstad症候群と関連がある。今回4歳の高乳酸血症、軽度肝機能障害、筋緊張低下、成長障害、MR、奇形、複合体III欠損を呈した幼児を報告する。呼吸鎖酵素活性は単独複合体IIIの欠損を筋ならびに線維芽細胞で認めた。シークエンスとPCR-RFLP分析により、新規のBCS1Lのホモ変異(c.148A>G)を見つけた。それは進化的によく保存されているBCS1L領域のアミノ酸T50A 置換を来たした。複合体III酵素欠損の臨床症状の重篤さは、罹患組織におけるBCS1Lと呼吸鎖複合体IIIの減少量に依存する。今回の症例は、単一臨床表現を呈した患者における新規BCS1L変異の病因解明の手助けとなる。

2009年5月17日 (日)

X連鎖副腎白質ジストロフィーの3つの新規変異

Three Novel Variants in X-linked Adrenoleukodystrophy.
J Child Neurol. 2009 Apr 30.

X連鎖副腎白質ジストロフィー(ALD)の3つの新規変異についての論文です。X連鎖ALDは、遺伝性の神経疾患でXq28にあり、物質を細胞質からペルオキシソームの表面へ移送するALD蛋白をコードするABCD1遺伝子の変異でおきる。インドでX連鎖ALDは変異分析の報告があまりなかったが、今回血縁関係のないインドの3家系における3つの新規変異(c.67_83del17, c.395G>A, c.1938_1939dupGG)について報告する。

2009年5月12日 (火)

ミトコンドリアtRNAリジン部位のA8344G変異に関連した中枢並びに末梢神経の脱髄疾患

Demyelinating disease of central and peripheral nervous systems associated with a A8344G mutation in tRNALys.
Neuromuscul Disord. 2009 Apr;19(4):275-8. Epub 2009 Mar 9.

 ミトコンドリアtRNAリジン部位のA8344G変異に関連した中枢並びに末梢神経の脱髄疾患についての論文です。今回急性の中枢ならびに末梢の脱髄を合併したミトコンドリアtRNAリジンA8344G変異をきたした症例を報告する。7歳の少年は急性の動悸、耳鳴、失調、両側の滑車神経麻痺、四肢の弛緩性麻痺を呈した。血清CKと乳酸は軽度上昇していた。筋電図では脱髄性の感覚、運動ポリニューロパチーのパターンであった。脳MRIでは左視床の脱髄と、MRSでこの部分の乳酸ピークの上昇が明らかになった。筋生検したところ、シトクロームCオキシダーゼ欠損ファイバーとRRFを認めた。呼吸鎖分析で複合体IとIVの低下を認めた。遺伝子解析でミトコンドリアtRNAリジン部位にA8344G(MERRFに特徴的な変異)を認めた。私たちが知る限り、この変異により急性の中枢性、末梢性神経脱髄をきたした最初の報告であると思われる。

2009年4月25日 (土)

 超低出生体重児グリシン脳症

Atypical glycine encephalopathy in an extremely low birth weight infant: description of a new mutation and clinical and electroencephalographic analysis.
Epileptic Disord. 2009 Mar;11(1):48-53.

 超低出生体重児グリシン脳症の非典型例についての論文です。今回超低出生体重児でグリシン脳症の非典型例をきたした症例の臨床経過と脳波所見を紹介する。患者は、生後3か月時に治療に反応しないミオクロニ―、無呼吸をきたした。症状が出た最初の日に、患者は発作性バースト減衰脳波パターンを呈し、その後数日で典型的なバーストサプレッションパターンになった。4週後にはWest症候群に移行し、生後7か月で重度の呼吸器感染から心肺停止になり、なくなった。遺伝解析では、グリシン開裂システムのT蛋白をコードするAMT遺伝子のコンセンサススプライトサイトの新規変異(IVS2-1G > C 3) が見つかった。

2009年4月12日 (日)

Alpers-Huttenlocher症候群に対するケトン食療法

Pediatric Neurology
Volume 40, Issue 4, Pages 314-316 (April 2009)

Alpers-Huttenlocher症候群に対するケトン食療法についての論文です。今回、ミトコンドリアポリメラーゼγシークエンスにより診断したAlpers-Huttenlocher症候群の女児について報告する。部分てんかん重積に対し古典的ケトン食療法により治療した。臨床的に改善し、脳波も劇的によくなったこれはAlpers-Huttenlocher症候群のてんかん性脳症に対しケトン食療法が効いた最初の報告である。今回ミトコンドリア病のケトン食効果に関して文献的考察と、なぜAlpers-Huttenlocher症候群に対しこの食事療法が効いたのかについての推察を示す。

Alpers-Huttenlocher 症候群とは、ミトコンドリア異常症の一つで脳症と肝機能障害を特徴とします。

2009年4月 5日 (日)

ミトコンドリア欠失症候群における頭蓋内脳室周囲偽嚢胞

Intracerebral Periventricular Pseudocysts in a Fetus with Mitochondrial Depletion Syndrome: An Association or Coincidence.

Fetal Diagn Ther. 2009 Mar 25;25(2):177-182.

ミトコンドリア欠失症候群における頭蓋内脳室周囲偽嚢胞についての論文です。とMRIで脳室周囲の大きな上衣下偽嚢胞をミトコンドリア欠失症候群(MDS)と後に診断された患者さんに認めたため報告する。われわれの見解では、これはMDSの患者における胎児上衣下偽嚢胞の最初の報告と思われる。これらの所見は妊娠リスクとしてMDSの胎児診断の重要な診断ツールとなるかもしれない。 偶然に胎児期に上衣下偽嚢胞を認めた新生児は新生児科医が直接ケアを行い、感染や染色体異常、代謝異常やその他の異常と関連づけて診察をするとよい。さらなる研究では、もし胎児上衣下偽嚢胞を認めた際は、それが関連がるものなのか、たまたま偶然に合併したものか見極める必要がある。

2009年3月14日 (土)

オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症患者の高アンモニア血症治療に伴う浸透圧性脱髄症候群

Osmotic Demyelination Syndrome as a Consequence of Treating Hyperammonemia in a Patient With Ornithine Transcarbamylase Deficiency.
J Child Neurol. 2009 Feb 18

 オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)患者の高アンモニア血症治療に伴う浸透圧性脱髄症候群についての論文です。7歳女児が新規にOTCDと診断され、高アンモニア血症に対し、標準的治療が行われた。数日後失調、測定障害、構音障害を呈した。脳MRIでは、橋と橋外白質に浸透圧性の脱髄が生じていた。以前から低ナトリウム血症の治療の結果として浸透圧性の脱髄症候群が起きるとされ、他の原因ではめったに起きないとされていた。このケースはOTCD患者の高アンモニア血症の標準的治療の重大合併症となる可能性があることを示している。

2009年2月28日 (土)

3メチルグルタル酸尿症Ⅳの生化学的、遺伝的解析

Biochemical and genetic analysis of 3-methylglutaconic aciduria type IV: a diagnostic strategy.
Brain. 2009 Jan;132(Pt 1):136-46. Epub 2008 Nov 16.
3メチルグルタル酸尿症Ⅳの生化学的、遺伝的解析に関する論文です。3-メチルグルタル酸尿症タイプⅣには多臓器を巻き込み、進行性の神経異常を呈し3-メチルグルタル酸尿と酸化的リン酸化の機能不全を伴う患者が含まれる。今回3-メチルグルタル酸尿症Ⅳの18人の小児の臨床的、生化学的表現型を記述し、4つのサブグループに分けた。脳筋型、肝小脳型、心筋型、筋型である。脳筋型では進行性神経異常、呼吸鎖複合体Ⅰ欠損を呈し、2人の小児が軽いメチルマロン血症とリー様脳症、ジストニアと難聴、SUCLA2の変異を呈した。肝脳型ではほとんどの患者は複合体Ⅰ欠損とミトコンドリアDNA欠失を呈し、うち3人はPOLG1変異を呈した。心筋型ではほとんどの患者は複合体Ⅴの欠損症と以前単独複合体Ⅴ欠損症とされていたタイプを呈し、うち3人はTMEM70変異を呈した。一人の男性は純粋な筋型と重度の複合型呼吸鎖異常を呈し、筋病理ではセントラルコア病を呈し、RYR1変異を呈した。今回私たちの患者では生化学マーカーでは3-メチルグルタル酸の存在は核がコードする呼吸鎖病を示唆していた。患者グループをまとめることにより18人中10人で遺伝子変異を明らかにした。これからは3メチルグルタル酸尿症Ⅳの小児では、臨床的、生化学的表現型に基づいて、POLG1, SUCLA2, TMEM70, RYR1のシークエンスとミトコンドリアDNA欠失解析を行うことを提案する。

3-メチルグルタル酸尿症にはいろんなミトコンドリア病が合併するのですね。臨床型により調べる遺伝子が絞られます。逆にミトコンドリア病の患者さんには尿分析をして3-メチルグルタル酸尿症がないか調べる必要がありそうです。

2009年2月22日 (日)

ペリツェウスメルツバッハー病の家系に認めた新規PLP1変異とさまざまな臨床症状

Variable Expression of a Novel PLP1 Mutation in Members of a Family With Pelizaeus-Merzbacher Disease.
J Child Neurol. 2009 Jan 16.

 ペリツェウスメルツバッハー病の家系に認めた新規PLP1変異についての論文です。ペリツェウスメルツバッハー病はミエリンの構造異常を来たすPLP1遺伝子の変異によりおきる稀なX連鎖病である。進行性の精神運動異常、眼振、痙性四肢麻痺、小脳失調である。新規のPLP1変異である619T>Cを持つ家系の5人がさまざまな臨床症状を示した。6歳の女児、兄、母方従兄弟(29歳の大卒者)を含む症状のある患者が当初脳性麻痺と診断されていた。彼らの脳MRIではびまん性の無髄鞘化を認めた。母は3歳に歩けるようになる歩行遅延を認めたが、彼女と彼女の母非症候性の患者と思われた。臨床症状と家族歴からペリツェウスメルツバッハー病の診断となった。原因となる変異が見つかり、着床前診断と非罹患者の生み分けが可能となる。

2009年2月11日 (水)

C20orf7の変異と致死的な新生児ミトコンドリア病

Mutation of C20orf7 disrupts complex I assembly and causes lethal neonatal mitochondrial disease.
Am J Hum Genet 2008 Oct 83(4):468-78

C20orf7の変異は複合体Ⅰの結合を阻害し、致死的な新生児ミトコンドリア病を引き起こすという論文です。複合体Ⅰ(NADH酸化還元酵素)はミトコンドリア呼吸鎖の最初で最大の多量体の複合体である。ヒト複合体ⅠはミトコンドリアDNAにコードされている7つのサブユニットと核DNAにコードされている38のサブユニットからなり、それらがお互い結合し、一つの機能を果たすと理解されている。最近複合体Ⅰ欠損症を引き起こす変異として14の核となるサブユニット、5つの副サブユニットと4つの結合因子が知られている。今回複合体Ⅰの結合因子であるC20orf7の変異により複合体Ⅰ欠損症が起きた。複合体Ⅰ欠損の致死的新生児タイプの候補が、小児と酵素胎内診断による2人の胎児のエジプトの家系のホモマッピングで見つかった。その場所をmicrocell-mediated chromosome transfer(MMCT)により決定し、ミトコンドリア蛋白をコードする11の候補遺伝子を解析した。C20orf7のホモのミスセンス変異がこの家族の患者さんに見つかった。C20orf7はミトコンドリアの内膜のマトリックス面に関連し、RNAiによって、その発現を障害すると複合体Ⅰ活性を低下する。C20orf7患者の線維芽細胞では、複合体Ⅰはほぼ完全に欠損しており、複合体Ⅰの結合の初期段階で障害されている。一方別の結合因子であるNDUFAF1の変異で認める結合障害とは違っている。C20orf7は複合体Ⅰの結合に必要不可欠で、この変異はミトコンドリア病を引き起こすと思われる。

2009年2月 6日 (金)

ミトコンドリアDNA変異は小児の重症リー脳症の主な原因

MtDNA mutations are a common cause of severe disease phenotypes in children with Leigh syndrome.
Biochim Biophys Acta 2008 Dec 6

ミトコンドリアDNA変異は小児の重症リー脳症の主な原因となるという論文です。リー脳症は小児のミトコンドリアや他の先天的な代謝異常によりおきる病気である。今回分子病態生理学的な機序を明らかにし、遺伝カウンセリングの際の根拠を得るために、リー脳症の25人に、臨床的な症状、予後、呼吸鎖機能、遺伝の解析を行った。全ての患者の臨床所見をレビューし、生検した筋組織を用いて、ミトコンドリアDNA全塩基配列、ミトコンドリアDNAポリメラーゼ遺伝子(POLGA遺伝子)、SURF1遺伝子の分析を含む分子的、生物学的、遺伝的な検査を行った。呼吸鎖酵素活性測定は5人に行い、1人が複合体Ⅰ単独欠損で、5人が複合型の欠損であった。複合体Ⅳの単独欠損はいなかった。7人がATPの活性割合の低下を認めた。8人に病理学的なミトコンドリアDNA変異を、一人にPOLGA遺伝子の変異を見つけた。ミトコンドリアの変異はリー脳症の主な原因となり、ミトコンドリアDNA分析はリー脳症の診断の際に行うべきである。一方SURF1変異は、リー脳症の主な原因とならないようである。発症年齢、臨床症状、予後はミトコンドリアDNAや核DNAの変異のリー脳症患者間に違いはなさそうである。

2009年1月24日 (土)

後天性水頭症に伴う非ケトーシス性高グリシン血症

Nonketotic Hyperglycinemia and Acquired Hydrocephalus
Pediatric Neurology Volume 40, Issue 2, Pages 138-140 (February 2009)

後天性水頭症に伴う非ケトーシス性高グリシン血症に関する論文です。非ケトーシス性高グリシン血症はグリシン代謝異常による常染色体劣性遺伝である。患者は新生児期には傾眠傾向を示し、食物困難、低緊張、無呼吸、難治けいれん、昏睡などを示す。ミオクロニーけいれんと脳波上のバーストサプレッションパターンがこのけいれんの特徴で、水頭症の進行はよくはみられない。今回のケースでは後天性の水頭症を来たし、精神遅滞、ミオクロニーけいれんを認め、最終的に非ケトーシス性高グリシン血症の診断となった。

2009年1月 9日 (金)

20番染色体にある新しいRefsum様疾患

A novel Refsum-like disorder that maps to chromosome 20.
Neurology. 2009 Jan 6;72(1):20-7. Epub 2008 Nov 12.

 20番染色体にある新しいRefsum様疾患についての論文です。ノルウェーの家系でRefsum病に臨床的、遺伝子的に似ている神経疾患が見つかった。症状を呈したのは兄妹とその従兄弟であった。その家族は小島出身であり、遺伝的調査でその両方の両親は1585年に生まれた一人の男性の子孫であることがわかった。この疾患は常染色体劣性遺伝であること、患者はホモ変異により生じることに基づくと、この疾患の遺伝子座を見つけるためにマッピングを施行した。この緩徐進行性の疾患は小児期に末梢神経麻痺(アキレス腱拘縮、凹足)で発症した。20代で難聴と白内障が明らかになった。その後はアタキシアと痙性、色素性網膜症のため歩行困難となった。臨床像はRefsum病に類似している一方で、血清フィタン酸とプリスタン酸は正常範囲内でα酸化酵素活性も正常であった。20番染色体の20p11.21-q12に15.96Mbに疾患をマップすることができ、そこにはおよそ200の遺伝子が含まれていた。23の候補遺伝子があるが、有害配列を決定することはできなかった。今回みつけたRefsum病に似た臨床症候群は以前に知られているものよりも類似している。この新しい疾患の臨床的特徴と遺伝マッピングを報告し、今後新しい他の家系の出現や適切な遺伝的特徴がわかっていくことを期待する。

ちなみにRefsum病とはペルオキシゾーム病の一つで、学童期に発症する色素性網膜症、多発神経障害、小脳失調症、聴力障害、嗅覚障害、魚鱗癬、骨格及び心症状を呈する。ペルオキシソームの役割の中でもα酸化作用障害により起き、フィタン酸の上昇、プリスタン酸の低下で起きる。CSF蛋白濃度は上昇する。

2008年12月31日 (水)

 若年性ガラクトシアリドーシス

Juvenile galactosialidosis with attacks of neuropathic pain and absence of sialyloligosacchariduria.
Eur J Paediatr Neurol. 2008 Dec 17.

 若年性ガラクトシアリドーシスの神経痛発作とシアリルオリゴサッカライド尿の欠如についての論文です。ガラクトシアリドーシスは、保護蛋白質/カテプシンA(PPCA)の活性低下によりおきる常染色体劣性のライソゾーム蓄積病である。尿のシアル酸含有オリゴサッカライドの増加が、診断マーカーとして大事である。今回、尿中のシアリルオリゴサッカライドが常に正常という非典型的な臨床症状の患者を経験した。少年は1歳半時に知覚過敏を伴う神経痛発作を呈した。4歳時に視力を測定してから進行性に視力は低下し、10歳時に斑状チェリーレッドスポットが見つかった。同じ10歳時に軽度の学習障害と粗な顔貌、腰椎前彎、下肢の錐体路徴候がわかった。ガラクトシアリドーシスはシアリルオリゴサッカライド尿がないことがあり、神経痛の鑑別診断としても重要である。

今年1年どうもお疲れ様でした。来年もよろしくおねがいします。

2008年12月26日 (金)

クレアチントランスポーター欠損症(CT1)のLアルギニン治療

Treatment with L-arginine improves neuropsychological disorders in a child with creatine transporter defect.
Neurocase. 2008;14(2):151-61.

クレアチントランスポーター欠損症(CT1)のLアルギニン治療についての論文です。CT1は遺伝性の精神遅滞、てんかん、言語障害、行動障害を来たす代謝異常症である。現在までに効果のある治療法はないとされていた。今回1歳のCT1の患者さんに、クレアチン合成の前駆体であるLアルギニンの経口投与を行い9.6歳までフォローした。内服下では明らかな神経学的、言語的、行動的改善を認め、MRSでの脳クレアチンやホスホクレアチンは増加した。これらの結果からCT1異常症の小児には、たとえ年が経過してもクレアチン機能に対する適応力はいくらかは残存していることが推察される。さらなるトライアルではより高濃度で長期のLアルギニン療法が望まれる。

2008年12月10日 (水)

ハンターホープのクラッベ病データーベース

The Hunter's Hope Krabbe Family Database
Pediatric Neurology Volume 40, Issue 1, Pages 13-18

ハンターホープのクラッベ病データーベースについての論文です。目的はクラッベ病患者さんの徴候、発症年齢、診断年齢、平均余命について調べることである。1997年からハンターホープ機構でクラッベ病と診断された患者の臨床データを集め始めた。
2006年6月に334家族が質問紙用紙に答えてくれた。国籍、性、発症年齢、診断前の徴候、診断時年齢、診断後の徴候、最初の診断、生存期間について調べた。症状を呈したのは、71%の患者で0-6ヶ月、19%で7-12ヶ月、10%で13ヶ月以降であった。0-12ヶ月に呈した最も多い初発症状は、啼泣、易刺激性、強直、けいれんであった。年長児では歩行異常や見当識障害であった。生存期間は発症年齢により異なり、乳児早期発症型では乳児後期や幼児期以降発症のタイプと比べて生存期間は短かった。今回のデータによりガラクトセレブロシダーゼ活性や遺伝子変異解析では患者の重症度はわからないことが明らかになり、またいくつかの病型の発症年齢や自然史、また初期症状が明らかにされた。

2008年12月 9日 (火)

POLG1変異によりおきるアルパース症候群に小児のてんかん重積

Status epilepticus in children with Alpers' disease caused by POLG1 mutations: EEG and MRI features.
Epilepsia. 2008 Nov 19.

 POLG1変異によりおきるアルパース症候群に小児のてんかん重積:脳波とMRI所見についての論文です。乳幼児でにおける難治性のてんかん重積まれな病態である。代謝病はしばしば重積を来たすが、とくにPOLG1変異によるアルパース病ではよく起きる。てんかん重積は最初の症状になることもある。その特徴的な脳波所見によりアルパースの診断ができ、肝不全を悪化させるためこの病気では禁忌であるバルプロ酸の使用を避ける。
今回5人のPOLG1変異のアルパース病の患者について報告する。5人中3人がてんかん重積発症から3-12ヶ月以内になくなった。うち二人はバルプロ酸使用による肝不全を呈し、一人は肝移植を施行されたが、神経学的後遺症は避けられなかった。痙攣性のてんかん重積がアルパース病の最初の明らかな症候であった。皆、部分間代、複雑部分発作を呈し、うち4人は部分持続てんかんを呈した。4人は最初の脳波で片側の後頭葉の多棘波が重畳したリズミックな高振幅δ波 (RHADS)を呈した。MRIは皆皮質、視床病変を呈し、一人はそれぞれ独立した異常を呈した。3人では代謝病検索は異常なかった。アルパース病は小児の難治性の痙攣性てんかん重積の重要鑑別診断である。脳波での RHADSは診断、治療、カウンセリングに重要である。

2008年12月 4日 (木)

T8993C変異によるリー脳症

Unusual findings in Leigh syndrome caused by T8993C mutation.
Eur J Paediatr Neurol. 2008 Nov 29. 

T8993C変異によるリー脳症の珍しい所見についての論文です。リー脳症のの病理学的特長は背景となるミトコンドリアもしくは核のゲノム欠損によりさまざまである。ミトコンドリアDNAの8993T>Gや8993T>C変異は、その変異DNAの割合に応じてNARPやリー脳症を呈する。8993T>C 変異によるリー脳症の臨床像は8993T>G 変異の患者より軽症であり、RRFや髄液のオリゴクローナルバンド、呼吸鎖複合体の欠損は通常認めない。今回8993T>C 変異を呈した2歳のリー脳症の女児を報告する。興味深いことに彼女はRRFを認め、髄液のオリゴクローナルバンドが陽性で、組織染色にて複合体ⅠとⅣの部分欠損を認めた。

久々にミトコンドリアシリーズです。

2008年12月 2日 (火)

L2ヒドロキシグルタル酸尿症と脳腫瘍

L-2-Hydroxyglutaric Aciduria and Brain Tumors in Children with Mutations in the L2HGDH Gene: Neuroimaging Findings
Neuropediatrics 2008; 39: 119-122
L2HGDH遺伝子における小児のL2ヒドロキシグルタル酸尿症と脳腫瘍についての論文です。L2ヒドロキシグルタル酸尿症は、常染色体劣性遺伝疾患で精神遅滞、小脳と錐体外路症状と基底核と歯状核を含む皮質下の白質脳症を呈する。L2HGDH遺伝子の変異によりL2ヒドロキシグルタル酸尿症を呈する。L2ヒドロキシグルタル酸尿症の合併症として悪性の脳腫瘍がある。L2ヒドロキシグルタル酸尿症の患者40人の中で、経過中2人が髄芽腫と膠芽腫を呈した。2人の患者で2つのL2HGDH遺伝子のミスセンス変異が見つかった(エクソン3 c.292C→T変異とエクソン7 c.887T→A)。二つの変異はともにホモであった。MRSと同様にシリアルMRIでは膠芽腫を呈した。

代謝病に脳腫瘍が合併するのですね。昔原因不明の発達遅滞の子が、脳腫瘍を発症しました。何か関係があるのですね。勉強してみたいと思います。

2008年11月20日 (木)

メチルマロン酸血症における脳障害

Brain damage by mild metabolic derangements in methylmalonic acidemia.
Pediatr Neurol. 2008 Nov;39(5):325-9.

メチルマロン酸血症における軽度代謝異常の脳障害についての論文です。メチルマロン血症はlメチルマロニルCoAムターゼ欠損症により引き起こされる。ムターゼ(0)タイプは致死率は高いが、タンデムマス分析では早期に発見可能である。5人の患者が新生児スクリーニングにおいてプロピオニルカルニチン(C3カルニチン)レベルの上昇を指摘された。これらの患者は平均日齢10でスクリーニング陽性という結果を受け取った。平均日齢11より治療を開始したところ、2患者は無症候性で一人のみ高度のアシドーシスを認めた。しかし全ての患者でいろいろな程度の高アンモニア血症を認めた。4人の患者で脳MRIを診断後すぐに施行したところ、全員異常が見つかった。4人の患者で経過をみたところ、初診時以降、さらなる代謝的な異常はなかったが、発達指数はたったの50であった。このことにより初期の高アンモニア血症がメチルマロン酸血症では脳障害を起こしていることがいえる。それゆえこの病気の新生児期の治療はもっと集中的にすべきであるといえる。

アシドーシスよりも高アンモニア血症のほうが、脳障害の原因となるのですね。僕もこれまでに何度か高アンモニアにやられています。

2008年11月19日 (水)

ハンチントン病のCAGリピート数と体重減少

Weight loss in Huntington disease increases with higher CAG repeat number.
Neurology. 2008 Nov 4;71(19):1506-13.

ハンチントン病においてCAGリピート数が多いほど体重減少がすすむという報告です。ハンチントン病は遺伝的な神経退行疾患で、ハンチントン遺伝子のCAGリピートが伸張することでおきる。ハンチントン病の特徴に意図しない体重減少があり、その原因は不明である。HDの体重減少の根底にあるメカニズムをはっきりさせるために、運動、認知、行動異常などのハンチントン病の他の症状とCAGリピート数との関係を調べてみた。初期のハンチントン病の517人に、3年間の体重変化とCAGリピート数や統一ハンチントン病関連スケール(UHDRS)の様々な項目との関係を混合モデル解析してみた。さらにCAGリピート数と体重とハンチントンモデルマウスであるR6/2のカロリー摂取の関係を分析した。ハンチントン病の患者では平均的なBMIは年間ー0.15づつ減少していた。しかしながら単一のUHRDS項目(運動、認知、行動スコア)は、体重減少とは関係なかった。CAGリピートの長いハンチントン患者は、体重減少割合が大きかった。同様にCAGリピート数の多いR6/2マウスは体重減少も大きく、一方CAGリピート数が多いほどカロリー摂取は多かった。ハンチントン病での体重減少は直接CAGリピート数と関係があり、おそらくは代謝亢進のためと思われる。病初期ではハンチントン病での他の徴候は体重減少に影響を及ぼさない。機序の解明により効果的な治療に結びつくと思われる。

2008年11月14日 (金)

MitoChipによる母系遺伝性無症候性の難聴のミトコンドリア全塩基配列解析

Whole mitochondrial genome screening in maternally inherited non-syndromic hearing impairment using a microarray resequencing mitochondrial DNA chip.
Eur J Hum Genet. 2007 Nov;15(11):1145-55. Epub 2007 Jul 18.

マイクロアレイを用いたミトコンドリアDNAチップによる母系遺伝性無症候性の難聴、ミトコンドリア全塩基配列シークエンスについての論文です。ミトコンドリアDNA変異により一次性もしくは2次性の無症候性の難聴がおきる。ミトコンドリア遺伝子のほんの一部のみが難聴と関係があるが、その割合はおそらくは過少評価されている。フランスの共同ネットワークに属する無症候性の感音性難聴の1350家系のうち、明らかな母系遺伝を呈する29の大家系を選び、ミトコンドリア変異として知られている12S rRNA、tRNASer、tRNALeu遺伝子をスクリーニングした。これらに遺伝子変異がなければ、ミトコンドリア全塩基配列スクリーニングをマイクロアレイリシークエンスチップ(Affymetrix社のMitoChipバージョン2)を用いて実施した。29家系のうち9つで既知のミトコンドリアDNA変異が見つかり、A1555Gが5家系、T7511Cが2家系、7472insCが1家系、A3243G変異が1家系見つかった。残る20家系でMitoChipによるリシークエンスをしたところ、258のミトコンドリアホモ多型と107のヘテロの多型を見つけた。その多型に対し、コントロールで直接シークエンスを行い、特にヘテロの多型に対し、MitoChipの特異度は低いが高い感度が示された。種での保存率や頻度、生理学的活性などを元に、より病的な多型であるものを選んで分析を実施した。全塩基配列解析により5つ(T669C, C1537T, G8078A, G12236A and G15077A)病的なミトコンドリア多型を同定した。この結果は、新しいMitoChipが難聴における新しいmtDNA変異を同定するのに迅速で優れたツールであることを示している。

久々のミトコンドリアシリーズです。

2008年11月10日 (月)

脳葉酸欠乏症候群

Progressive Encephalopathy in a Child With Cerebral Folate Deficiency Syndrome.
J Child Neurol. 2008 Oct 14.

脳葉酸欠乏症候群における小児の進行性脳症についての論文です。脳葉酸欠乏症候群は最近発達遅滞、退行、けいれんの原因になることがいわれており、葉酸受容体に対する自己抗体と関係がある。発達遅滞と原因不明のけいれんと昏睡をともなう発作の既往がある女児について報告する。昏睡とそれに続く退行の精査をしたところ、髄液神経伝達物質に異常が見つかった。髄液中の5-メチルテトラヒドロ葉酸(葉酸の活性代謝物)が低値で、葉酸受容体に対する自己抗体が上昇していた。葉酸の治療にも関わらず難治性のてんかんと重度の発達遅滞を呈した。

他のレポートでは・・・
 小児期の脳葉酸欠乏症は脳脊髄液中の葉酸が減少するが,血中の葉酸は減少しないため,葉酸欠乏を示す通常の徴候はみられない.脳葉酸欠乏症の小児では,葉酸の葉酸受容体への結合を妨げる自己抗体が産生されていることが明らかになった.きわめて高用量の葉酸を投与することで,一部の小児では臨床的改善が得られた.葉酸受容体に対する自己抗体は,これまで神経管欠損症に関与するとされていた.
 
 葉酸受容体抗体は癌の分野で研究が進んでいます。

2008年11月 5日 (水)

ミトコンドリアDNA欠失による両側線条体壊死、ジストニアに対する深部脳刺激法の効果

Bilateral Striatal Necrosis, Dystonia and Multiple Mitochondrial DNA Deletions: Case Study and Effect of Deep Brain Stimulation

Movement DisordersVol. 23, No. 1, 2008, p. 114-150

ミトコンドリアDNA欠失による両側線条体壊死、ジストニアに対する深部脳刺激法の効果についての症例報告です。両側線条体壊死は比較的まれで、核、ミトコンドリアDNAの変異などの多くの原因よっておきる。今回これまで報告のないミトコンドリアDNAの欠失による両側線条体壊死により2次的に生じた全身性のジストニアを呈した37歳の患者を提示する。淡蒼球の脳深部刺激により障害は著明に改善した。

難治性の不随意運動には脳深部刺激法が有効なんですね。リスクに関してもう少し勉強してみたいと思います。

2008年10月30日 (木)

ミトコンドリアND3遺伝子の母系遺伝ミスセンス変異による新生児リー脳症

Fulminant neurological deterioration in a neonate with Leigh syndrome due to a maternally transmitted missense mutation in the mitochondrial ND3 gene

Biochemical and Biophysical Research Communications 334 (2005) 582.587

ミトコンドリアND3遺伝子の母系遺伝ミスセンス変異による新生児リー脳症の神経障害についての論文です。リー脳症は核とミトコンドリアの両方のDNA欠失におきる。呼吸鎖の複合体Ⅴの変異は現在までに頻度のもっとも高いミトコンドリアDNA遺伝性のリー脳症の原因として知られている。複合体Ⅰの遺伝子変異は常染色体劣性のリー脳症と関係している。最近複合体ⅠのミトコンドリアDNA変異がリー脳症を起こしたといった報告が少数されている。今回脳幹から基底核病変を呈し急激に脳幹機能の悪化で発症した1ヶ月児を経験した。筋生検では複合体Ⅰが欠損していた。ミトコンドリアDNAのシークエンスにてND3遺伝子におけるT10191C変異のホモプラスミーを認め、その結果セリンがプロリンに変化していた。毛根細胞では50%の変異率で、初期胚細胞期ではヘテロプラスミーであったことを示していた。母親も5%に同じ変異を認めた。ウェスタンブロット法により20kDa(おそらくND6)と30kDa(NDUFA9)のサブユニットの減少を認めた。それはND3を含む複合体の部分が不安定になったため、それらの部分も不安定になったためだと考えられた。これはND3の新規ではなく母由来のT10191C変異によって乳児リー脳症を来たした最初の報告である。この変異は年齢、組織依存であり、出生前診断は不可能である。

ミトコンドリアシリーズ3段です。勉強すればするほどわからないことが増えていくのですが続けて行きたいです。実際の検査手順のイメージがわかないのが、大学で研究したことのない地方病院勤務医のいたいところです。

2008年10月29日 (水)

中国のリー脳症

Clinical and molecular survey in 124 Chinese patients with Leigh or Leigh-like syndrome.
J Inherit Metab Dis. 2007 Apr;30(2):265.

 中国の124人のリー脳症、リー様脳症の臨床的、分子的調査についての論文です。リー脳症は最も有名な小児の中枢神経の壊死を特徴とするミトコンドリア病である。ミトコンドリア呼吸鎖におけるミトコンドリアDNAと核DNAの欠損がこの病気を引き起こす。
リー脳症やリー様脳症の臨床的、遺伝的な特徴を調べるのに、1992年から2005年までに124人の中国人を集めた。77人(62.1%)がリー脳症の両側対称性の基底核、視床、脳幹の異常といった診断基準を満たした。他の37.9%は非典型的な臨床、画像像のためリー様脳症とした。20.2%が遅発発症であり、以前に報告したものである。運動障害が最も認めた症状であった。32人に遺伝子異常を指摘でき、6例(4.8%)にミトコンドリアDNAの点変異を認めた。2人づつA8344G変異、A3243G変異を認めた。T8993G変異とT8993C変異は一人づつ認めた。シトクロームオキシダーゼ欠損症で認めるSURF1変異は25人(20.2%)に認めた。3人に4つのこれまでに報告のないSURF1遺伝子の異常を認めた。G604C変異は22人に認めた。一人のみピルビン酸デヒドロゲナーゼのE1αサブユニット遺伝子のC214T変異を認めた。残りの92人(74.2%)に特定の分子機能異常や背景となる代謝異常を認めなかった。
      
   ミトコンドリアシリーズ第3段です。疾患背景がわかっているせいか、読むのが早くなった気がします。

2008年10月28日 (火)

ミトコンドリアDNA ND5に新規変異を認めたリー脳症

Leigh disease associated with a novel mitochondrial DNA ND5 mutation.
 Eur J Hum Genet. 2002 Feb;10(2):141-4.
 
ミトコンドリアDNA ND5に新規変異を認めたリー脳症についての論文です。リー脳症は核遺伝子やミトコンドリア遺伝子に異常をもつことによっておきる小児の遺伝的に多様性のある神経変性疾患である。ここで神経病理学的にリー脳症と複合体Ⅰ欠損症を呈した患者に分子遺伝的な所見が得られたので報告する。複合体Ⅰの7つのミトコンドリアDNAの直接シーケンス法を行い、ミトコンドリアND5遺伝子に新規のミスセンス変異(T12706C) を見つけた。その変異は成熟ポリペプチドにおいて強く保存された膜貫通のへリックス部のアミノ酸を変化させると予測される。骨格筋や培養線維芽細胞での両方でヘテロプラスミックである。ND5のT12706C変異と複合体Ⅰの特異的な生化学的異常との関係を考えると病原性をもつと強く予想される。

ミトコンドリアシリーズ第2段です。少しでも患者さんに還元できるよう勉強していきたいと思います。

2008年10月27日 (月)

リー脳症を引き起こしたNDUFA2複合体Ⅰの変異

NDUFA2 complex I mutation leads to Leigh disease.
Am J Hum Genet. 2008 Jun;82(6):1306-15.
NDUFA2 complex I mutation leads to Leigh disease.

 リー脳症を引き起こしたNDUFA2複合体Ⅰの変異についての論文です。ミトコンドリア単独複合体Ⅰ欠損はよく認める酸化的リン酸化異常である。今回筋と皮膚の線維芽細胞に発現している単独複合体Ⅰ欠損を伴った患者について報告する。両親が血族結婚のため、5番染色体にあるNDUFA2のような候補遺伝子を含む領域のホモ接合体異常を見つけるためにマッピングを行った。ゲノムDNAのこの遺伝子を調べたところ、スプライシングを妨げることによりエクソン2がスキップされるような変異が見つかった。エクソンのスキップはmRNAレベルで起きていた。この変異により複合体Ⅰは活性が低下し、複合体を形成できない。さらにこの変異はミトコンドリアの脱分極とも関係している。複合体Ⅰの発現や活性化、またその脱分極は、NDUFA2遺伝子の発現させるバキュロウイルスシステムによって復活した。

バキュロウイルス:昆虫に感染するウイルス。

ミトコンドリア関連の論文を書こうと思います。しばらくミトコンドリア関連の話題になると思います。

2008年10月19日 (日)

ジクロロ酢酸ナトリウム

Evaluation of long-term treatment of children with congenital lactic acidosis with dichloroacetate.
  Pediatrics. 2008 May;121(5):e1223-8.

 この研究の目的は以前にこの薬のコントロールトライアルを行った人を含む36人の先天性乳酸血症のジクロロ酢酸Naの長期の効果について調べることである。無作為コントロール試験後に、オープンラベル試験を行った。2005年5月の治療開始時からの患者ごとにデータを集計したところトータル110.42年のジクロロ酢酸治療期間であった。平均身長、体重は期間中増加した。一方標準値はやや減少したが、それも10%タイル以下にとどまった。生化学的代謝的指数の大きな変化はなかったが、血清総たんぱくが2%上昇、24時間尿中オキサロ酢酸が22%上昇した。乳酸の基本また炭水化物食による上昇がジクロロ酢酸Naにより上昇は緩やかになった。平均の脳脊髄液の乳酸濃度もまた期間中減少した。副作用として腓骨神経の伝導速度は減少し、遠位潜時は増加した。3年生存率は79%であった。経口のジクロロ酢酸Naは一般に先天性高乳酸血症の若年小児において抵抗がある。また血浮きにジクロロ酢酸を用いると末梢神経障害が生じるが。これが主に薬のせいなのか、病状の進行によるものかは、わからない。
 

2008年10月14日 (火)

PKANと深部脳刺激

Deep brain stimulation as a mode of treatment of early onset pantothenate kinase-associated neurodegeneration.
Eur J Paediatr Neurol. 2008 May 6.

早期発症のパテント酸キナーゼ関連神経変性症(PKAN:Hallervorden-Spaz病)に対する深部脳刺激療法についての論文です。今回、2.5歳でアタキシアで発症したPKANの女児についての報告である。その後、彼女は難治性の重度のジストニアを呈し、運動コントロールが完全にできなくなった。PKAN2遺伝子のエクソン5のアラニンがバリンに変わる変異(A382V)を認めた。11歳のときに、淡蒼球に深部脳刺激法を行ったところ、重症ジストニアが軽快したため運動能力が回復し、話すことができるようになった。感染のために3ヶ月間刺激ができなかったとき、彼女は徐々に刺激前の状態に戻っていった。今回の症例は古典型PKANの6番目の症例で、淡蒼球刺激で軽快した。5番目の症例も深部脳刺激に反応しており、今回は感染のため一次DBSを中断せざるを得なかった症例である。また今回の症例は新規の変異を持ちかつ、早期発症における他の典型的な症候をさし追いえて新しい臨床像(アタキシアで発症し、早期のけいれんがあったこと)を呈した。

いろいろな不随意運動に深部脳刺激の有効性が言われています。薬物療法で改善しないときは、深部脳刺激という選択もあるのではないのでしょうか。

2008年9月10日 (水)

リー脳症における脳MRS

MR spectroscopy of the brain in Leigh syndrome.
Brain Dev. 2008 Oct;30(9):579-83. Epub 2008 Mar 10.

リー脳症における脳MRSについての論文です。リー脳症の2人の脳MRSでは灰白質の乳酸と白質のコリンの上昇を認めることが明らかになった。白質のコリン上昇は進行進行性脱髄とおそらく関係があり、MRIでは白質病変のない患者さんでさえもリー脳症における白質の特別な代謝に基づくと考えられている。MRSは眼筋麻痺やケーズセイヤー症候群などの他のミトコンドリア病とリー脳症を鑑別するのに有用である。それらはMRIでは異常ないが、脳組織での乳酸の欠乏を示す。

リー脳症だと灰白質に乳酸の上昇が、白質にコリンの上昇が認められるんですね。基底核病変のところの乳酸ピークの上昇は有名ですね。

2008年9月 8日 (月)

サラ病とアスパラギン酸

Identification of a vesicular aspartate transporter.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Aug 19;105(33):11720-4. Epub 2008 Aug 11.

小胞性アスパラギン酸トランスポーターの同定についての論文です。アスパラギン酸は興奮性のアミノ酸で、海馬のシナプス小胞や松果体細胞のシナプス様小胞(SLMVs)にグルタミン酸と一緒に蓄えられており、間隙に分泌され、特異的な受容体をもつ隣接細胞を刺激する。アスパラギン酸の神経伝達が起きている報告はあったが、アスパラギン酸の小胞内貯蔵のメカニズムがはっきりしないため、このプロセスはよくわかっていなかった。
ここで私たちは、ライソゾームのH+/ シアル酸供役トランスポーターであるシアリンが海馬のシナプス小胞と松果体のSLMVsに存在することを示した。シアリンの発現のRNA干渉により松果体細胞におけるアスパラギン酸とグルタミン酸のエキソサイトーシスが減少した。精製されたシアリンを含むプロテオリポソームは内在の陽性膜電位が分泌をうながす程度に高まるまで積極的にアスパラギン酸とグルタミン酸を蓄積する。サラ病の患者さんで見つけられた変異をもつシアリンでは多くのH+/ シアル酸供役トランスポート活性があるにもかかわらず完全にアスパラギン酸とグルタミン酸の移送能力がなかった。これらの結果はシアリンは本来の生理学的機能と小胞のアスパラギン酸/グルタミン酸トランスポーター活性のとして活性の両方を有しているということを強く示唆する。サラ病の患者はアスパラギン酸(グルタミン酸も)の神経伝達が障害されている可能性があり、サラ病では重度の神経障害がおきる理由となっている可能性がある。

サラ病はシアル酸がたまる病気です。確か日本では報告はないと思うのですが、白質のジストロフィーの一つとしてなにかと鑑別診断には上げられる病気です(以前受け持ちの患者もサラ病を疑われたことがありました)。アスパラギン酸とも関係があるんですね。

appreciable かなりの